ダブルネック三味線
ヒドラ物語
「風と波の境界線(はざま)に鳴るもの」
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🌺あらすじ
青森の吹雪と、沖縄の潮風。
ふたつの島国文化が交わるとき、世界にひとつの音が生まれる。
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🥁登場人物
佐藤奏真(さとう・そうま)
津軽三味線の若き名手。青森在住。祖父の影響で幼少期から弾いてきたが、型にとらわれた伝統に少し飽きを感じている。
新垣うるは(あらがき・うるは)
沖縄三線をこよなく愛する女子高生。民謡を通じて地域と繋がることに誇りを持っているが、本島の人々には理解されないもどかしさも抱える。
謎の楽器職人「カナタ」
全国を旅する楽器職人。どんな素材でも「魂の音」を引き出すと噂される。年齢不詳。かつて津軽にも、沖縄にもいたらしい。
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🎶物語の流れ(ダイジェスト)
第一章:吹雪の音、潮騒の声
高校の音楽部交流イベントで、奏真とうるはが出会う。
うるはの三線を見た奏真は「音が柔らかすぎて、勝負にならない」と冷たく笑う。
うるはは「あなたは“音”じゃなくて“音量”で戦ってる」と言い返し、二人は衝突。
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第二章:出会いの調弦
イベントの後、偶然同じ喫茶店で演奏会に誘われた二人。
そこに現れたのが、謎の楽器職人カナタ。
彼は「本当に“合わない”音同士ほど、混ざったときに魂を揺さぶる」と言って、奇妙な楽器を見せる。
それが——
津軽三味線と沖縄三線が一本に融合した、ダブルネック三絃だった。
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第三章:風と波のはざまで
最初は互いのリズムも音階も合わず、バラバラだったふたり。
しかし、ぶつかり合う中で、それぞれの音楽が生まれた土地のリズムに根ざしていると気づく。
津軽の音は吹雪のなかで生き抜く力強さ
沖縄の音は海と共に暮らす柔らかさと祈り
互いに「理解しよう」と歩み寄ったとき、楽器が本当に響き始める。
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最終章:境界線をこえて
文化交流のステージで、ふたりは「風と波の舞」と名づけたオリジナル曲を披露。
会場は静まり返り、拍手が降り注ぐ。
その音はもう、どちらかの音ではなく、ふたりの音だった。
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🎤エピローグ
演奏のあと、カナタはふたりにこう告げる。
「楽器は“道具”じゃない。“出会い”そのものだよ」
ダブルネックの三味線は、やがて「ヒドラ」と名づけられ、
全国を旅するふたりの象徴となる——。